2018年1月12日
技能実習法による新しい技能実習制度について/ご相談は大阪の社会保険労務士 くぼた労務行政事務所まで!
厚生労働省と法務省が共管する「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下「技能実習法」)が平成29年11月1日施行されました。技能実習法では、技能実習生の受け入れに当たり重要な役割を担う監理団体を許可制としており、平成29年6月1日から外国人技能実習機構(以下「機構」)本部で許可申請の受付を開始し、11月1日付けで一般監理事業または特定監理事業を行う監理団体の許可を行いました。また、平成29年7月3日からは、機構の地方事務所・支所で技能実習計画認定の申請を受け付けており、順次、認定手続が進められます。
技能実習制度は、開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度として、我が国の国際貢献において重要な役割を果たしています。技能実習法は、技能実習に関し、技能実習計画の認定及び監理団体の許可の制度を設け、これらに関する事務を行う外国人技能実習機構を設けること等により、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るものです。
■技能実習の基本理念及び関係者の責務
<技能実習の基本理念>
○技能実習は、技能等の適正な修得等のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。
○技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。
<国の責務>
○この法律の目的を達成するため、基本理念に従って、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進しなければならない。
<実習実施者の責務>
○技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について技能実習を行わせる者としての責任を自覚し、基本理念にのっとり、技能実習を行わせる環境の整備に努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力しなければならない。
<監理団体の責務>
○技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について重要な役割を果たすものであることを自覚し、実習監理の責任を適切に果たすとともに、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力しなければならない。
<技能実習生の責務>
○技能実習に専念することにより、技能等の修得等をし、本国への技能等の移転に努めなければならない。
■技能実習計画
<技能実習計画の認定>
○技能実習を行わせようとする方は、技能実習生ごとに、技能実習計画を作成し、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けることになりました。
○認定は、新設される外国人技能実習機構が担います。
<認定を受けた技能実習計画の実施>
○実習実施者は、認定を受けた技能実習計画に従って技能実習を行わせなければなりません。
○仮に違反があった場合には、改善命令や認定の取消しの対象になります。
<実習実施者の義務>
○実習実施者は、初めて技能実習を開始したときに、届出が必要になります。
○そのほか、技能実習継続困難時の届出、帳簿の備付け、実施状況報告等を行わなければなりません。
■監理団体
<監理団体の許可>
○監理事業を行おうとする方は、事前に許可を受けることになりました。
○許可の事務は、新設される外国人技能実習機構が担います。
<監理事業の適正な実施>
○監理団体は、監理事業を適正に運営しなければなりません。
○仮に違反があった場合には、改善命令や許可の取消しの対象になります。
<監理団体の義務>
○監理団体は、団体監理型技能実習の実施状況の監査その他の業務を、省令で定める基準に従って実施しなければなりません。
○そのほか、技能実習継続困難時の届出、監理責任者の設置、帳簿の備付け、監査報告、事業報告等を行わなければなりません。
■技能実習制度の拡充
○新たに技能実習3号を創設し、所定の技能評価試験の実技試験に合格した技能実習生について、技能実習の最長期間が、現行の3年間から5年間になります。(一旦帰国(原則1か月以上)後、最大2年間の技能実習)
これは現在の技能実習生制度を拡張する制度として3年間の満了後にあと2年実習を続けることが可能となる制度です。現在最長3年の実習が認められている71職種130作業に対し、2年間延長可能となります。技能実習3号の対象者は所定の技能評価試験(技能検定3級相当)の実技試験に合格した者となっています。
○適正な技能実習が実施できる範囲で、実習実施者の常勤の職員数に応じた技能実習生の人数枠について、現行の2倍程度まで増加を認められます。
■技能実習生の保護等
○技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定や罰則を設けるほか、技能実習生による申告が可能となります。
○国による技能実習生に対する相談・情報提供体制を強化するとともに、実習実施者・監理団体による技能実習生の転籍の連絡調整等の措置が講じられます。
○事業所管大臣への協力要請や、事業協議会を用いて、政府全体で技能実習の適正な実施及び技能実習生が保護されます。
○地域協議会が設けられ、地域レベルでも関係行政機関が連携します。
■外国人技能実習機構の創設
○外国人技能実習機構は、以下の国の事務を担います。
・技能実習計画の認定・実習実施者の届出の受理
・実習実施者・監理団体に報告を求め、実地に検査する事務
・監理団体の許可に関する調査など
○そのほか、技能実習生からの相談への対応・援助や、技能実習に関する調査研究業務も行われます。
■その他の制度改正事項
<政府(当局)間取決め>
○技能実習生の送出しを希望する国との間で、政府(当局)間取決めを作成することを通じ、相手国政府(当局)と協力して不適正な送出し機関を排除していくことが目指されます。
<対象職種の拡大>
○対象職種を随時追加するほか、地域限定の職種・企業独自の職種(社内検定の活用)・複数職種の実習の措置が認められていく予定です。
人手不足を補う手段として「外国人労働者」の受け入れが議論されていますが、この制度はあくまで「技能実習」である事を見失ってはいけないと思います。